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【団体インタビュー】地域を越えたつながりは、仕事と生き方のリンクから生まれる【一般社団法人Teco】

他地域とのつながりや組織を越えた人脈をどのように作っていくかという課題は、特に地域密着の活動をしている団体にとって思い当たるところがあるものではないでしょうか。福島県いわき市平窪地区で活動する「一般社団法人Teco(以下、Teco)」は、コミュニティスペース「下平窪サロンてこてこ(以下、てこてこ)」を拠点に、住民の交流イベントやサロン運営、復興公営住宅の支援などを行う団体です。(詳しくはコチラ→【団体紹介】一般社団法人Teco

TecoのFacebookからは、アマビエのオブジェ制作や季節ごとのイベント、薬膳お茶会など、コロナ禍の中でも地域の方とともに、日々楽しくサロン運営をされている様子が伝わってきます。外部人材を積極的に巻き込みながら、精力的な活動を無理なく続けていくためのヒントを、代表理事の小沼満貴(おぬま・まき)さんに伺いました。(会話文中敬称略)

復興公営住宅の住民さんによるサプライズお誕生会(下段真ん中が小沼さん)

           

願いは口に出せば叶う。継続の鍵は「楽しさ」にあり

――Tecoでは普段どのような活動をされているんですか?

小沼:住民の交流拠点であるてこてこは、基本的に平日9~16時は毎日開けています。コロナを気にされている住民の方もいらっしゃるので、今は大きなイベントを控えつつ、感染症対策を行いながら小規模に活動を続けているという状況です。
行政が受託元の事業は、コロナの影響で活動中止にせざるを得ないものもあるのですが、サロン活動はRCFを始め民間の支援があるおかげで続けられています。目の前に困っている人がいるのに何もできないというのは私達も本当に辛いので、こういった社会情勢の中でも活動できているのは非常にありがたいです。

例えば3月は、元々東日本大震災の復興支援をされていた方につるし雛作りを教えていただいたり、震災から10年ということで追悼の舞を披露してくれる方が来てくださったり……サロンでの活動がきっかけとなって、台風被害後ずっと会えずにいた住民の方同士が再会するということもありました。活動を続けていれば、小さなつながりが少しずつでも生まれていくんだなと感じたできごとです。

      

――外部の方がゲストや講師をされていることも多いようですが、どうすればこれだけの活動を継続して実現できるのでしょうか?

小沼:何かやりたいと思って口に出すと、不思議と叶うんです(笑) Tecoのスタッフは活動的で、幅広い人脈をもっているメンバーが多いので、「こういうことをやりたい」と言うと、「それならこの人がいいんじゃない?」と誰かが紹介してくれることが多いですね。各自の人脈をフル活用している他、SNSを活用して「ぜひ来てもらいたい!」という方に直接メッセージを送ってみたら来てもらえたということもあります。楽しいことや、何もない中でどうしたらいいかを考えるのが得意なメンバーがそろっているので、今できる中で何が最善かを考えて動けているんだと思います。

     

――スタッフのみなさんが楽しんで企画されているからこそ続けられているんですね。

小沼:そうですね。設立メンバーは本当にパワフルで、共感を大事にしながら働けているなと感じています。私達は職場の居心地が悪かったら活動の意味がないと思っているので、子育てや介護中のメンバーも働きやすいような環境づくりを心がけています。考え方や想いが近い人がたまたま集まったんですが、タイプはそれぞれ違うんです。しっかり者の経理のプロ、細かい仕事が得意な地元のお母さん、ダンスが得意で柔軟にいろいろなことをこなしてくれる若手……と、それぞれの個性を活かしながらいいバランスで働けていると思います。

子どもからお年寄りまで参加する薬膳お茶会

       

自分の生き方と仕事を分けないことが、多様な関係性づくりにつながる

――メンバー自身にとっても心地いいと思える環境づくりが、継続的な活動にもつながっているんですね。Tecoのメンバーは人脈のある方が多いということですが、1回限りで終わらせない関係性づくりには何かコツがあるのでしょうか?

小沼:私の場合、元々の自分の生き方がそのまま仕事にも活きているのかもしれません。Tecoを始める前は「コロコロと仕事変えているし、何がしたいの?」みたいに言われることもあったんですが、Tecoの活動は今までの生き方となんとなくつながっていると感じます。

意識的にネットワーキングしようとしているわけではなくて、出会った人とお話するのが好きで、ちょっと気になる人がいると誰にでもすぐ声をかけてしまうんです(笑)仕事と自分の生き方を分けないというか、友達に相談するような感覚と近いかもしれませんね。

       

――Tecoの活動は多くのメディアでも取り上げられていますが、メディアとの関係づくりも同様に友達づきあいの延長線のような感覚なのでしょうか?

小沼:そうですね。まさに、今となってはみんな友達という感覚です(笑) 最初の頃は、いわき市役所にメディアの投げ込みを2回くらい持って行ってましたけど、その後は1度取材してくれた人に直接連絡しています。今は「こういうことするから来てもらえませんか?」と連絡すると、電話1本で来てくれるような関係性です。向こうも仕事で来てくださっているんですけど、熱い人が来てくれるので、こっちも思わず熱い想いを話してしまいます(笑)

そもそもメディアに取り上げてもらおうと思って動いているわけではなくて、サロン活動やイベントの企画は、どれだけ住民も自分達も楽しむことができるか、エンパワーメントを発揮できるかを重視して考えています。一番大切にしているのは、参加してくださる住民の方それぞれのよさを引き出すということです。結果としてそれが、ちょっと風変わりなことや目立つことにつながっているように思います。季節ごとのイベントも多いので、メディアも取り上げやすいのかもしれませんね。

これまで私自身はメディアをあまり信じていなかったんですけど、活動を通じてメディアの影響力も感じるようになりました。例えば、冬にイルミネーションプロジェクトを実施した際は、電飾を集めているという記事を見た人から連絡があり、たくさんの電飾が集まりました。記者の方に「おかげでイルミネーション集まったよ!ありがとう!」と連絡すると、「また何かあったら言ってください」と返してもらえる。そんな風にメディアの方々とも常につながっている感じなんです。

いわき民放に掲載されたTecoの記事

        

「てこの力」で地域に寄り添い続ける場所を作りたい

――東日本大震災からは10年、2019年10月の台風19号の被害からは1年半以上経ちますが、未だに残っている課題はどういったものがあるのでしょうか?

小沼:全国的な問題だとおもいますが、やはり高齢化ですね。復興公営住宅には、元々住んでいた家を再建しづらい人や、近くに家族がいない人が入っているケースが多く、入居時点ですでに高齢という方が中心なのですが、被災から更に10年経っています。車に乗れなくなったらどこにも行けませんし、高齢化が深刻化しているのはひしひしと感じますね。

行政としては復興公営住宅に入った時点で避難者にはカウントしなくなりますし、メディアも節目のときくらいしか取り上げないので風化していってしまいます。当初は全国各地からいろいろな団体が来てくれていたんですが、コロナ禍で余計ストップしてしまったというのもあります。

課題は変わっていきながらも何かしら問題はあるのに、そこにずっと寄り添い続ける団体はなかなかいないんです。いわき市は人口30万人以上と大規模な自治体なので、市全体ではどうしてもそれぞれの区で誰がどんなことに困っているのかまでは見えづらくなってしまいます。Tecoではそんな隙間にいる人を支援していきたいなと思っています。

いわき市の場合、これまでも交流の場が必要だとは言われていたものの、誰でも気軽に来られて、常に開かれている場所がありませんでした。平窪地区でそういう場所を作りたいと思って開いたのが「てこてこ」です。お世話になった人はみんな、私達のおじいちゃん・おばあちゃんのように思っています。仕事だから関わっているのではなく、友達や家族みたいな感じですね。

最初から数年後、数十年後のような先は見据えられないけど、できるだけずっと寄り添っていたいなと思っています。平窪地区では最近交流カフェやコミュニティ食堂もできて、住民が自主的に運営しています。こんな風に、一方的に支援するだけではない活動も生まれているんです。

コロナ禍でサロン活動を縮小していた期間はサロンの外で住民の方と野菜を育てるなどし、交流の機会も生まれた

         

――最後に、今後どのような方針で活動を持続していきたいかを聞かせてください。

小沼以前は交流の場に出てこない人をどうやったら引っ張り出せるかと考えていたんですが、出てこない人は出てこなくてもいいんじゃないかと思うようになりました。個別訪問でもいいですし、無理に外へ連れ出すのではなく、はたからにぎやかなのを見ているだけでもいいと思うんです。出てくる人が増えれば、それを見守る目も自然と増えます。これからは、一人一人が本来もっている力を引き出せるような、エンパワーメント型の支援を考えていきたいですね。

個人的には、できるだけ多くの人に「今」を楽しく過ごしてほしいと思っています。リスク回避みたいな生き方をしている人が多いように感じるんですが、それって本当に生きていると言えるんでしょうか?

Tecoには、小さな力で大きくものごとを動かす「てこの力」になれたら、という意味を込めています。ちょっとのきっかけで何か大切なことを思い出したり、短い時間だけどここに来てよかったと思えたり、人生にはそういう「生きててよかった」と感じられる瞬間が大事だと思うんです。嫌なことがあってもちょっとしたことで救われる、そういう瞬間がいっぱいあればいいなと思っています。被災者かどうかは関係なく、住んでいる人が「住んでいてよかった」、「生きていてよかった」と感じられる機会を作っていけたら嬉しいです。

このスタンスは、Tecoのメンバーの生き方そのものと言えるかもしれません。誰かの役に立ちたくて仕方ないというわけじゃなく、単純に人と関わるのが好きなんです。だからスタッフと利用者の垣根を越えて、「お互いに助けてもらってる」というつもりで活動しています。

――小沼さんのお話からは、メンバー自身が楽しく活動することが何よりの原動力であることが伝わってきました。非営利組織だからこそ、個々人の生き方と組織のあり方を重ね合わせることは企業で働く以上に大切なことなのかもしれません。

\団体のご紹介/

一般社団法人Teco
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  • 支援対象の災害

    台風15号・19号

  • 事業期間

    2020年2月~2021年3月

  • 活動地域

    福島県いわき市

活動地域の被災状況と課題

・台風19号により夏井川等が氾濫し1,200haが浸水
・死者12名、罹災者数は約7,000世帯にのぼる
・住宅地の平窪地区は、今もなお住宅の復旧がままならず在宅避難を余儀なくされている方が多い。また地区外への避難や転居をした方も数多く、従来のコミュニティが失われている現状

目指す成果

【コミュニティサロンによる交流づくり】
コミュニティスサロンを拠点に、被災者の精神的・肉体的ストレスを改善するための取組を行い、被災者が必要としている支援や情報を届けられている状態

おもな活動内容

・コミュニティスペースの運営
・復興公営住宅の避難者支援
・各種イベントの実施
・住民への情報提供

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